
太陽がだんだんとかたむいてきました。
海や砂浜の色も、すこしづつ黄金色になってきたようです。
もうすぐ1日が終わろうとしているのが、サミーとジーンには分かりました。
海や風の音は昼間よりずっと穏やかです。
あたりには大きなリズムで奏でられる、波の音が満ちているようです。
光や匂いや音。
サミーとジーンはそういったものに包まれて、幸せな気分になっていました。
「夕日が沈んだら帰ろうか」とジーンが言いました。
「そうだね」
本当はサミーもジーンも、ずぅーっとここにいたいのですが、そういうわけにもいきません。
今日撮ったビデオの映像は、メールにくっつけて送るね」
とジーンが言いました。
「そんなことできるの?」
「うん、ちゃんとパソコンで見られるようにして送るからね」
それは楽しみです。
パソコンのディスプレイで動く自分を見られるなんて、サミーは少しわくわくしてきました。
-第12回目を振り返る-
FM WORLDで連載していたサミーは毎週の更新だったのですが、海にゆく回はちょうど一ヶ月で一つのお話が終わったような記憶があります。
偶然出会ったねずみ達はパソコンを通じて友達になり、一緒に海にゆきます。泳いだり浜辺でのんびりしたり。楽しい時間も過ぎてゆき、やがて浜辺は夕暮れが訪れます。
彼らはどんなことを話し、どんな時間を共有したのでしょうか。
海や浜辺を訪れて、青い海を目にした瞬間の心の高まり。そして夕方になって訪れる切ない気持ち…あの不思議な感情は一体なんなのだろう。そんなことを考えながら制作していました。
サミーとジーンのモデルデータ以外は、Photoshopを使ってマウスでカチカチと描きました。何かの写真を参考にしたはずですが、金色に光る海はどう表現すれば?と悩んでたような…ペンツールでカチカチと描いて、レイヤーのフィルターをあれこれ調整したり。今考えれば、一日中そんなことができていた日々が羨ましいです。
公開時は「夕凪」というタイトルだったのですが、このページでは「夕なぎ」と変更しました。その方がなんだか優しい感じがするので。夕なぎという言葉はイブ・モンタンの映画で知りました。すごく素敵な言葉ですよね。