マトリックスの新作ができると聞いた時、正直あまり期待感はなかった。予告を観ても何か新しい映像体験ができそうな気はしなかったのである。
僕はブレードランナーに本当に衝撃を受け、いまだにブレードランナーの呪縛から逃れられない人間である。SF映画に対しては特に頑固で厳しい見方をしてしまう。それでもマトリックス1作目は本当に衝撃的だった。確か2年ほど前に再上映に行ったのだが、その時も「今観ても全く色褪せることはない」と思いながら劇場を後にした。
勿論観に行かない選択肢はないので、しばらく観ていなかったリローデッドとレボリューションズをおさらいする。金土で一作ずつ、そして日曜夜にレザレクションズと、3日連続での鑑賞となった。
マトリックスは様々な映像的衝撃があったのだが、主要登場人物の魅力というか、その描き方も素晴らしいと思う。特にトリニティはネオを導きながら惹かれてゆく、その心の揺めきや深い瞳の色合いが美しかった。
レボリューションズのトリニティは、少し疲れたような印象があった。結末も悲しすぎて、僕には少し重たい映画だったと思う。だからレボリューションズはあまり観ていない。
そう思って劇場に行ったのだが、新作はレボリューションズで感じたある種の辛さ、切なさが全て取り戻されるような作品だった。まるで最初から4部作構成であったかのようだ。予告を観てトリニティが登場するのは知っていたが、こんなお話になるなんて。
レザレクションズは映像的な新しさではなく、3作目で果たされなかったネオとトリニティの純愛映画なのではなかろうか。前半のメタ構成から後半、トリニティが目覚めるまで。よくぞこんなお話を考えてくれたものだ。
トリニティが「ネオ!」って叫ぶ場面。本当に素晴らしかった。あの場面、今年一番のプレゼントである。